SW912 Art Car Project. 🎨

S-LINE AG世界に一つの美学

皆さんこんにちはS-LINE AG代表の亀田です。

私はこのプロジェクトを振り返って、改めて「アートって何だろう」と考えました。

sean_wotherspoon が描いたPorsche 912を、S-LINE AG の職人たちが形にしていく。

私たちにとっても、特別なプロジェクトになりました。

Sean Wotherspoon

今回の912を語るうえで、Sean Wotherspoonという人についても少し触れておきたいと思います。

Seanはロサンゼルスを拠点に活動するデザイナー、アーティスト、キュレーター、そしてヴィンテージコレクター。

Nike Air Max 1/97をはじめ、ファッションやスニーカーの世界で広く知られ、現在はGapのGlobal Vintage Curatorとして、過去のアーカイブを発掘し、今の時代へつなぐGapVintageにも取り組んでいます。

彼の活動はファッションだけにとどまりません。

Porscheとも深い関わりがあり、2022年にはPorscheとともにTaycan 4 Cross TurismoのArt Carを制作。

そこで生まれたSean Peachをはじめとする4つのオリジナルカラーは、その後PorscheのPaint to Sampleへとつながり、Sean Peachは実際にPTSカラーとして選択できるようになりました。

さらに、1973年の911 Carrera RS 2.7でも、彼らしい色彩やヴィンテージ素材を使ったArt Carを制作しています。

Seanの作品を見ていると、一貫しているものがあります。

それは、過去をただ懐かしむのではなく、そこにある色や素材、歴史を大切にしながら、自分の感性で新しい価値へつないでいくこと。

今回の912にも、その考え方が表れています。

過去から生まれた、新しい912

この912に使われている色は、ゼロから新しくつくられた色ではありません。

Seanが選んだのは、当時のPorscheのカラーサンプルに存在していた色たち。

Porscheがもともと持っていた色をSeanの感性で組み合わせることで、今までに見たことのない一台が生まれました。

内装にはヴィンテージのLevi’sが使われています。

新しいものだけでつくるのではなく、時間を重ねてきたものに、今の感性を重ねていく。

古いものをそのまま残すわけでもない。
すべてを新しくしてしまうわけでもない。

過去を大切にしながら、新しい価値へつないでいく。

私はそこに、この912の面白さを感じました。

S-LINE AGの職人たち

今回の912を形にしたのは、最後はやっぱり職人の手でした。

私自身も18歳からこの世界に入り、ずっと職人の仕事を見てきました。

職人というと、綺麗に塗れるとか、鈑金が上手いとか、技術の話になりがちです。

もちろん技術は大切です。

でも私が思う、本当にいい職人は、それだけじゃない。

その一台をよく見て、考える。

何を残すのか。
どこまで手を入れるのか。
どうすれば、そのクルマが本来持っているものを壊さずに、もっと良くできるのか。

完成した時には見えなくなってしまう下地や、ほんのわずかなライン、パネルのつながり、光が当たった時の色の見え方。

誰かに言われなければ気づかないようなところまで、自分たちが納得できるかどうか。

私は、そこに職人のマインドが出ると思っています。

今回の912も同じでした。

Seanが描いた世界観を、ただ指示通りに塗ればいい仕事ではありません。

一枚のスケッチを、本物のPorscheにする。

ボディには曲線があり、見る角度によって色の面積も変わる。
隣り合う色の見え方も、光の入り方も変わる。

Seanの感性を尊重しながら、最後は自分たちの目と手で答えを探していく。

そこにS-LINE AGの職人たちの仕事がありました。

僕たちは普段996や997に向き合う時も、同じように考えています。

古いクルマだから全部新しくするのではなく、その一台が20年以上残してきたものをちゃんと見る。

残すべきものは残す。
直すべきものは直す。
そして手を入れたこと自体を主張するのではなく、その一台が自然に格好良く見えるところまで持っていく。

主役は職人ではなく、いつもクルマです。

だからこそ、職人は表から見えないところに一番時間を使う。

912 Art Carは特別な作品でした。

でも、そこに向き合った職人たちのマインドは、私たちが普段一台の996や997に向き合っている時と変わりません。

一台一台違うから、一台一台考える。

そして、自分たちの仕事を次の時代に残せる仕事にする。

それが、私の考えるS-LINE AGの職人です。同じモデルでも、一台一台違う

そして完成した912を見ているうちに、私たちが普段向き合っている996や997にも、どこか通じるものがあるんじゃないかと思いました。

(PEC東京、Sportscar Together Day 2026)

同じモデルでも、一台一台違う。

色も、仕様も、コンディションも違う。

歩んできた時間も、そこに関わってきたオーナーの想いも違う。

20年以上という時間を重ねた今、もう二つとして同じものはありません。

S-LINE AGは996、997、986、987、いわゆる「6系7系」のPorscheを専門にしています。

僕たちが一台のPorscheと向き合う時も、そのクルマが重ねてきた時間を見ながら、何を残し、何を直し、どう次へつないでいくかを考えます。

ただ綺麗にすればいいわけでも、何でも新品にすればいいわけでもない。

その一台が持っている雰囲気や個性を大切にしながら、もう一度その魅力を引き出していく。

Paint & Bodyworkも、Restorationも、その考え方は変わりません。

アートとは何か

私はアーティストではありません。

だから「アートとは何か」に正解を出せるわけではありません。

でも今回、この912に携わって感じたことがあります。

アートとは、何もないところから新しいものを生み出すことだけではなく、すでにそこにあるものの価値や背景に気づき、それを今の時代へつないでいくことでもあるんじゃないか。

Seanが912で表現したことと、私たちが996や997に対してやっていることは、もちろん違います。

でも、過去を消して新しくするのではなく、その背景や個性を大切にしながら次の価値へつないでいく。

そこには、どこか共通するものを感じます。

世界に一つの美学を持った、この912。

そして20年以上の時間を重ねた996や997もまた、一台一台がそれぞれの個性を持っている。

もしかすると僕たちは、ずっと前からそんな「一台一台の違い」に魅力を感じて、この仕事をしてきたのかもしれません。

912が残してくれたもの

そして今回、もうひとつ大切なものが残りました。

人との出会いです。

Seanの感性。
オーナー吉澤氏の情熱。
そして、それを実際の形にする職人たち。

それぞれ違う領域のプロが日本中から集まり、自分たちが培ってきたものを持ち寄って、一台のPorscheをつくる。

誰か一人だけでは、この912は完成しなかったと思います。

一緒に考え、悩み、形にしていく中で、本当の仲間と呼べる人たちに出会えました。

912は完成しました。

でも、ここで生まれた友情はこれからも続いていく。

それぞれが自分の領域を磨き、またいつか一緒に面白いものをつくれたらと思っています。

一台のPorscheから人が集まり、過去にあったものから新しい価値が生まれ、職人の手によってひとつの作品になり、最後には友情まで残る。

それも含めて、アートなのかもしれません。

同じモデルでも、一台一台違う。

私たちS-LINE AGはこれからも、その一台にしかないものを大切にしながら、Porscheと向き合っていきたいと思います。

最高の仲間たちに、心からありがとう。

S-LINE AG
KAMEDA
 亀田